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No.101

2017年7月某日
 更新を途絶えさせたまま3か月過ぎてしまった。貧乏暇なしは変わらないが、仕事にかまけて忘れてしまったわけではない。筆を執ろうとして、いい話がひとつも浮かんでこないことに嫌気がさしてしまうのである。悲憤慷慨の種ばかりで、それに対する書きなぐりのメモはたまっても、雑記の文章にはなっていかない。ここは論陣を張る場ではない。一息つく時間にしたいのである。よしなしごとに筆を遊ばせるなんてことはどだい無理なのであるが、できれば政治がらみの話題からは離れたい。どう書いても、理不尽で非道い現実が見えるばかりで、スッキリすることはない。言論を展開する能力も適性もない。嫌気がさすというのはそういうことだ。かといって、世の中を斜に見て諦観したり、厭世的な気分を募らせたりする文章も書きたくない。
 私の場合、希望の兆しを見つけて、あるいはどこかに見つけたくて、書いているのだと思う。どんなに否定的なことを書いたとしても、どこかで自分を納得させる流れに転調させたいと思っている。そうでないと文章を終えられない。リアリズムを徹底できないのである。
 前置きが長くなった。やっと書きたいことが見つかった。史上最年少14歳の藤井聡太四段の快進撃である。文句なしに明るい話題で、こんなに気持ちのよい大騒ぎもあるのだということに心を動かされた。29連勝の新記録樹立が新聞一面のトップを飾ったのにも違和感がない。解説記事は「人間ゆえの魅力」という見出しを付け、「ありがとう、藤井四段」と結んでいた(6月27日、毎日)。30連勝はならなかった。しかし、負けたこともまた明るい話題になった。藤井君は負けっぷりでも失望させなかった。将来の楽しみに変わっただけで、誰もが「残念」と言いながら笑顔である。勝つか負けるかのデジタル的な結果だけではないのである。負けを受け止める態度、そこに表われる人間に反応して笑顔になるのである。
 以前、AI将棋がプロ棋士と対局して勝ち続け、実力で人間を超えたというニュースに感動した人がどれだけいただろう。「将来が楽しみだ」と笑顔で語った将棋ファンはいないと思う。ソフトを開発した人間がいるわけだが、その人物に対する称賛はどうか? コンピュータの専門家の間でのことは知らない。というより、コンピュータオタクの世界のことが、我々一般人との間で感動を共有できていないという事実を認めることが重要である。
 もたらされた現実に困惑しているにもかかわらず、AIの進化に疑問を呈する論調は、私の知る限り、主要マスコミでは皆無である。生活全般の自動化、省力化、AIのコントロールに頼ることを「恩恵」であり「進歩」であるとするのが大前提になっていて、それに異議を唱えるのはタブーのようだ。せいぜい、悪用されないようにとか「対策」の必要性を付け加えるだけである。AIにかなわないことが「常識」になっていくなかで、藤井君人気の沸騰は、単なる天才少年に対する驚嘆だけではないように思える。AIの席巻を「面白くない」と思う気持ちが、生身の人間力に引き付けられたのではないだろうか。遠からずAIと勝負する日が来るのかどうか。私はそれを見たいとは思わないのであるが、その時、藤井君はどのような態度で臨むのか、また、人々はそれにどう反応するのか、興味深い。
 出版に関係する話題に引き寄せて終えることにする。「AIに小説を書かせる」試みが行なわれているらしい。売れている本の分析結果をインプットして自動執筆させたらいいなんてことも言われている。冗談じゃないと思うが、情報がネットに飛び交い、「フェイクニュース」が影響力をもってしまう現実をみれば、売れるための操作に心を奪われたIT起業家(「実業家」とは呼びたくない)が「勝者」となり、従来の作家や人間力に頼る出版者は退場させられる日が来ないとは限らない。しかし、そんな悪夢は忘れよう。新しい出版の天才出現を夢見たっていいじゃないか。

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