【内容紹介】 |
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統合失調症の患者を理解することはむずかしいが,理論にもとづく“理解的アプローチ”は可能である。本書オリジナルの「精神構造と保護膜」の理論による患者の状態の解釈によって,回復過程にある患者の支援=専門的な看護実践=看護方針と具体策が根拠づけられる。よく「わかる」ための理論編に加えて,「本書では今日の精神科病院医療の現状をふまえて,理論以前に基本的に重要な倫理や実践知,処遇や治療についてもページを割くことにした(Ⅰ:第1,2,3章)。その結果,必須事項をしっかりとおさえ,統合失調症急性期看護を総合的に学ぶために不足のない一書に生まれ変わったと思う(☞書名変更)。内容的な肝である“精神構造と保護膜”の理論(Ⅱ部:第4,5,6章)についても,ほとんど新しく書き直した。考え方の筋道は前書と変わらないが,説明する用語を整理し,わかりやすく明確な文章表現に改めるなど,リファインに努めた。説明はできるだけ心理学的概念に頼らないようにした。精神構造による「患者理解」が,心理学による「こころ」の解釈とは別の,看護学独自のテーマであることを明確に示したかったのである。・・・・中略・・・・いずれにしろ,“精神構造と保護膜”理論の説明は,本書の記述が,現時点における決定版である。」(「あとがき」より)
第Ⅲ部・事例集(事例1~10)も充実。Ⅰ部(総論),Ⅱ部(理論)のおさらいとしてだけでなく,基礎教育の教材としても好適。本書をおいて統合失調症の看護を語ることは出来ない。
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【著者紹介】 |
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阿保 順子(あぼじゅんこ) 長野県看護大学名誉教授
1949年青森県弘前市生まれ。1970年日本赤十字中央女子短期大学卒業。慶応義塾大学通信教育部にて哲学を,弘前大学人文科学研究科にて文化人類学を学ぶ。日本赤十字中央病院,弘前市立病院にて看護師。看護教員,非常勤講師を経て,1993年北海道医療大学看護福祉学部教授。2010年長野県看護大学学長(~2014年)。現在,NPO法人こころ理事長。
著書:『身体へのまなざし;ほんとうの看護学のために』(すぴか書房,2015年),『精神看護という営み;専門性を超えて見えてくること・見えなくなること』(批評社,2008年),『痴呆老人が創造する世界』(岩波書店,2004年/岩波現代文庫では『認知症の人々が創造する世界』に改題,2011年),『回復のプロセスに沿った精神科救急・急性期ケア』(編著,精神看護出版,2011年),『高齢者の妄想;老いの孤独の一側面』(浅野弘毅と共編,批評社,2010年),『人格障害のカルテ〔実践編〕』(犬飼直子と共編,批評社,2007年),ほか。
岡田 実(おかだみのる) 岩手保健医療大学教授
1952年青森県青森市生まれ。1977年弘前大学教育学部卒業。1985年弘前大学医療技術短期大学部看護学科卒業。2004年放送大学大学院文化科学研究科総合文化プログラム環境システム科学群修了,修士(学術),2010年北海道医療大学大学院看護福祉学研究科看護学専攻博士後期課程修了,博士(看護学)。青森県立つくしが丘病院看護師長,青森県立精神保健福祉センター総括主幹,弘前学院大学看護学部教授,長野県看護大学教授を歴任。2019年より現職。現在,大学院研究科長。また,Zoomによるオンライン・ワークショップ(中堅・熟練看護師育成プログラム,看護研究支援プログラム,文献の抄読会)主催。 mokada@iwate-uhms.ac.jp
著書:『暴力と攻撃への対処;精神科看護の経験と実践知』(すぴか書房,2008年),『ナイチンゲールはフェミニストだったのか』(共著,執筆論題「ナイチンゲールの女性論;ラスキン,J・S・ミル,ガマーニコフとの比較から」,日本看護協会出版会,2021年),ほか。
東 修(あずまおさむ) 佐久大学看護学部准教授
1967年北海道森町生まれ。1992年掖済会名古屋看護専門学校卒業。2009年北海道医療大学大学院看護福祉学研究科看護学専攻博士前期課程修了,修士(看護学)。精神看護専門看護師。看護師として生々会松蔭病院,国立名古屋病院,市立函館病院,林下病院勤務を経て,2013年長野県看護大学健康センター長,2015年同大学看護学部講師。2019年亀田北病院看護部長補佐。2021年より現職。
著書:『死の臨床;高齢精神障害者の生と死』(松本雅彦・浅野弘毅編,執筆論題「精神科病院における身体合併症治療の現状」,批評社,2011年),『回復のプロセスに沿った精神科救急・急性期ケア』(阿保順子編,2章①,精神看護出版,2011年)
那須 典政(なすのりまさ) 林下病院看護部長
1971年北海道上士幌町生まれ。1996年北海道立衛生学院看護師科卒業。2018年北海道医療大
学大学院看護福祉学研究科博士後期課程単位取得後退学。精神看護専門看護師。看護師として柏葉脳神経外科病院,市立函館病院,林下病院勤務。2010年長野県看護大学健康センター長(〜2013年)。札幌保健医療大学看護学科助教,天使大学看護学科講師を経て,2016年より現職。
著書:『在宅看護学講座〔第2版〕』(スーディ神崎和代編,第Ⅳ部第4章,ナカニシヤ出版,2019年),『回復のプロセスに沿った精神科救急・急性期ケア』(阿保順子編,3章③,精神看護出版,2011年),『人格障害のカルテ〔実践編〕』(阿保順子・犬飼直子編,執筆論題「人格障害者との間で葛藤する看護師の安寧のために」,批評社,2007年) |
【主要目次】 |
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序章 |
精神科看護の現在を問う:精神医療と看護、この50年をかえりみて |
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Ⅰ 統合失調症急性期看護学総論 |
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第1章 |
回復過程としての統合失調症急性期:中井久夫“寛解過程論”による
1 統合失調症の急性期とは
2 統合失調症の経過
3 病歴;急性状態の患者背景
4 臨界期のケアの重要性 |
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第2章 |
精神科救急あるいは外来受診患者の入院
1 救急と入院:患者の受け入れ
2 患者へのアプローチ
3 行動制限に伴う法的根拠
4 薬物療法
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第3章 |
統合失調症急性期看護の基本:精神科看護の専門的常識
1 望ましい入院
2 治療的接近の原則
3 家族に対するケア
4 看護師自身のストレスへの対処 |
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Ⅱ 統合失調症急性期看護の展開:“精神構造と保護膜”の理論 |
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第4章 |
患者理解の方法
1 「精神構造」モデル
2 発病:精神構造による解釈-❶
3 統合失調症急性期の患者理解:精神構造による解釈-❷
4 臨界期の精神構造
5 寛解期前期から後期の精神構造
6 精神構造モデルの理論的広がり |
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第5章 |
看護の原則:統合失調症急性期看護の実践を導く理論
1 保護膜という考え方
2 統合失調症急性期看護の原則:“精神構造と保護膜”の理論
【原則1】患者が自ずと張っている保護膜をはぎ取らない
【原則2】患者の外側から保護膜を張る
【原則3】患者の内側から保護膜が張られていくことを妨げない |
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第6章 |
回復過程に沿った看護の実際:看護方針と具体策
1 発病時(急性状態)の看護
2 臨界期の看護
3 寛解期の看護 |
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コラム |
-1 徘徊や自閉・引きこもりの意味
-2 臨界期の期間
-3 臨界期における療養の場 |
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Ⅲ 統合失調症急性期看護事例集:精神構造の解釈と看護の実際 |
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事例 |
-1 幻覚・妄想に支配され,自らの言動をコントロールできなくなった患者
-2 思考の混乱により疎通性に障害のある患者
-3 躁状態で,感情のコントロールが困難な患者
-4 引きこもりから,亜昏迷・昏迷状態をきたした患者
-5 陽性症状が表面的には目立たないが,幻聴が活発な患者
-6 興奮が激しく攻撃的で,治療・ケアに抵抗が強い患者
-7 焦燥感や不安から自殺企図に及んだ患者;臨界期の看護
-8 急性状態は治まって退院したが,幻聴に悩まされて再入院に至った患者;寛解期の看護
-9 激しい妄想を抱きながら1人で暮らしている患者;訪問看護でのかかわり➊
-10 年1人暮らしで生活は自立できているように見えるが,実際は幻聴が激しく必需品の買い物にも支障をきたしている患者;訪問看護でのかかわり➋
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