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「本書の目的は,人間の社会生活の中で起こる出来事には,通常の因果関係では説明できない“意味のある偶然”が存在し,そこには,人と人とを結ぶつながりのようなものが潜在している可能性が少なからずあることを明らかにすることにある。それが成功するかどうかは,ひとえに,本書で提示される事例の質と量とにかかっている。事例として,私自身も繰り返し登場するが,それは,個人を中心にしたつながりが網の目のように広がっていることを示す資料としてお読みいただきたいと思う。この事実が一般化できるとすれば,ひとりの個人を中心にして,「各人は自分自身の劇の主人公であり,かつ同時にまた別の劇の端役」にもなっているという,19世紀ドイツの哲学者,アルトゥル・ショーペンハウアー(1788〜1860)の着想(ショーペンハウアー, 1973,p310-311 )が,決して無意味なものではないことを示す,ひとつの裏づけにもなるかもしれない。」(序章「本書の目的」より) |
【著者】笠原敏雄(かさはらとしお) |
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1947年生まれ。早稲田大学第一文学部心理学科卒業。八王子市の永野八王子病院,小樽市の医療法人北仁会石橋病院心理科,大田区の医療法人社団松井病院心理療法室に勤務の後,1996年4月,品川区西五反田に〈心の研究室〉開設,現在に至る。著書に『隠された心の力』『懲りない・困らない症候群』『幸福否定の構造』(以上,春秋社),『希求の詩人 中原中也』(麗澤大学出版会),『本心と抵抗』(すぴか書房),『加害者と被害者の“トラウマ”』(国書刊行会),『幸せを拒む病』(フォレスト新書),『超心理学ハンドブック』(ブレーン出版),『超心理学読本』(講談社プラスα文庫),編著書に『死後の生存の科学』(叢文社),『サイの戦場』(平凡社),『超常現象のとらえにくさ』『多重人格障害』『偽薬効果』(以上,春秋社),翻訳書に『がんのセルフコントロール』(共訳,創元社),『前世を記憶する子どもたち 1,2』,『もの思う鳥たち』(以上,日本教文社)、その他。 |
【主要目次】 |
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序章 |
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第1章 |
探検と科学
今西錦司という生きかた
閉じた道徳と開いた道徳
認知の歪みと偏見
科学が根づかない国 |
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第2章 |
科学における強大な壁 唯物論というイデオロギー
パウリ効果
科学は知識を塗り替える
現行の科学知識では説明できない現象
超常現象研究の特殊性と困難性
心身二元論
唯物論者の人間観
生まれ変わりの事例研究 人格変化,憑依,真性異言 |
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第3章 |
遍歴と邂逅 1.心理学の森へ
“偶然の一致”という現象
早稲田大学文学部心理学科
主体的な関心に導かれて
進路の模索 |
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第4章 |
遍歴と邂逅 2.転機―進路を定める
小樽での経験 精神科病院の心理科
小坂英世を知る
“専門家”の実態
未知の研究領域へ
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第5章 |
遍歴と邂逅 3.心理療法と心の研究
心理療法の新たなフィールド
心理的原因とは何か 小坂の方法論に基づく探究
試行錯誤の段階
人間の心の本質
超常現象の研究 心理療法の中で起こるふしぎな出来事
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第6章 |
人間のつながり 1.奇縁──秋元波留夫と石田昇
“精神医学こと始め”を担った人びと
病前の石田昇
事件の発生 |
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第7章 |
人間のつながり 2.輩出する逸材──同時代の群像
行動主義心理学と精神分析の同時代性
京都でつながる俊秀たち
中原中也の周辺
著名人が輩出する家族 |
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第8章 |
人間のつながり 3.著名人たちの若年での出会い
就学前の出会い
小学校での出会い
中学・高校時代の出会い |
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第9章 |
人間のつながり 4.活動圏の拡大──南方熊楠の場合
破天荒な探検者―南方熊楠の生きかた |
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第10章 |
偶然か必然か 共時的な現象、運命、集合的無意識
偶然を超える事象の概念化 カンメラー、ユング、ケストラー
共時的現象に関する既存の理論が内包する問題点
ユングの“集合的無意識”
ソンディの“運命心理学” |
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第11章 |
つながりの検討 1.ミルグラムの実験的研究
“小さな世界”という仮説
Webでつながる時代の新たな研究分野 理数系研究者の参入
実生活の中で見られるつながり |
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第12章 |
つながりの検討 2.スタンフォードの理論
PMIRモデル 人間行動における超常的要因
物体が対象になった事例
人物が関与する事例 奇跡的“偶然”
適合行動理論へ
サヴァン症候群の位置づけ |
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終 章 |
心の実在論
生物の進化史における意識の位置づけ
間の能力と意識
生物学における見えない糸
“人生劇”あるいは“運命”
“幸福”とは何か |
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参考文献 |
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