【内容紹介】 |
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看護教員時代に「気がかり」に思ったことが記された資料(学生の提出記録、卒業生の寄せ書き、新聞の切り抜き、etc.)の束をほどき、「手当たり次第に読んでいった」著者の心に、かつて「宿題」にしたまま決着のついていないあれこれが蘇る。科学的な「正しさ」の追求が「最善の看護」になるとは限らない。その「最善」を追求する教育はどのように行なわれているのだろうか?
科学的説明や理論に向かう以前(あるいは同時)に、人間的な「思いやり」を原点とする臨床的な営み=ケアリングがある。それを「看護の知」にしていかなければならない。看護師・教師を人生そのものとする著者(86歳)の内省と、現在進行形の思索の旅。 |
【著者紹介】
細川順子(ほそかわじゅんこ)
兵庫県生まれ。看護師。神戸大学医学部附属病院婦長(当時)を経て同附属看護学校専任講師(1980年)。以後、看護教員として神戸大学医療技術短期大学部講師、助教授、神戸大学医学系研究科看護学専攻教授(1999年)。2001年退職。現在フリー。大阪教育大学大学院教育学研究科修士課程修了。著書:『臨床看護面接――治癒力の共鳴をめざして』(すぴか書房) |
【目次】 |
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プロローグ――学生からもらった宿題 |
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T. |
看護と科学
事例研究とエビデンス
自然体が理想
科学的な研究の限界
ある学生の卒業研究――あたりまえの結論に至るまでの気づきと感動
科学を学ぶ意味――自由になるための不自由
科学のウソ
真実の保証
クリティカルシンキング
科学の非人間化を防ぐ科学的な態度
科学的に生きる
心理療法は科学であるか(河合隼雄)
正しい看護と、より良い看護
看護技術について
テクノロジーの進歩と看護
看護には未だ科学に非(あら)ざる領域がある |
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U. |
疎外される人間
目を向けなければ問題にならない
確かな知識から生じる無知
マニュアルと人間
医療難民――マニュアルには載らない人間
「正しさ」による人間疎外
問題指向と看護教育の盲点 |
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V. |
看護師になるための教育
アイデンティティ・クライシス
「わかってもらえない」不安
あるがままの自分を受け入れる |
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W. |
看護とケアリング 計画してはいけないこと
「人間的な看護」の方法は定式化できない
事例に頼ることの限界――ケアリングのわかり方
「よい看護」の主体的実践
「第三の科学」としての看護学
私の方法――省察的実践(ショーン)との違い
最善の看護法――意図と気づかい
ケアリングに時間をかける余裕はない? |
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X. |
人間の真実
『永山則夫――封印された鑑定記録』を読んで |
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エピローグ 補遺-1 補遺-2 あとがき 謝辞 |